蝶志望

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横一線登りまくり 俺たち田舎のイモ虫 京って名前の木に登って 美しい蝶になりたいんだ ところがどこで間違えたのか俺、 さなぎじゃなく、セミの抜け殻みたいになってしまった 中身はカラッポなんにも無い 青春のまっただ中で とんだカン違いをしたもんだ だから埋め合わせに、空飛ぶ円盤とっつかまえたり、枯れた言の葉っぱほじくったりして 殻に閉じ籠もってやっとこさ液化しはじめた とびっきりの触角 スペシャルな羽根 どいつとも似つかないセンセーショナルな模様 それを形成しながら 出遅れた俺は、外の世界に目を光らせて さなぎから羽化するやつらを見ていた。 「夜の蝶をオトしてみたい」とか言いながらさなぎになったあいつ 羽化してみると 蛾だった 当の本人は蝶になったつもりらしく有頂天で 毒の鱗粉まき散らしながらフラフラ飛び回り、何か歌ってる 「りんぷんりんぷん、俺の好きなにこにこぷん」 うわダサッ 韻踏んじゃってるよ 蛾だから、恋する相手も悩殺される相手ももちろん蛾だった。 そいつ、金色の光に群がったムッチムチ蛾ギャル達にイチコロで 窓からその部屋へ入った瞬間、人間にキンチョールでイチコロにされた。 ダブルでイチコロってわけさ。 墜ちながらそいつは言った 「蛾ーん」 「死ぬ間際にダジャレかよ」と、俺はそいつを見直したりした 一方その頃、蝶は蛾を蝶だと思い込んでいた そして自分を蛾だと思っていた だから死ぬまで悩んだ
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