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しかし、この数日間、ジローは鬼の所にやってきません。
鬼は、モヤモヤしたような、ギュッと締め付けられるような不思議な想いを感じました。
今日で、四日間は連続です。
鬼にとってこんな感情は、こんなキモチは初めて感じるものでもありました。
ジローはどうしたんだろう。
大好物の木の実を前に、鬼はそんなことばかり考えていました。
気が付くと、時間はもう夕暮れ時。
さっきまで、うるさいぐらいだったアブラゼミの合唱も、優しいヒグラシ達の声に変わっています。
黄金の輝きから、朱色に染まり沈んでゆく太陽。
今日も、ジローは来なかった。
そう思い、大きなため息をついたときです。
ガサガサガサ。
草木をわけて進む音。
驚いて、そして期待を込めて振り向いた鬼は見ました。
そこにいたのは、ジローでした。
「ジロー、ジロー!」
鬼は、笑顔でジローに近寄ります。
「鬼のオジサン!」
ジローも、鬼に負けないくらいの笑顔で、鬼に近づきます。
「あのな、鬼のオジサン、スゲェんだ!」
鬼は、なんで今までここに来なかったのを聞きたかったのですが、あまりに楽しそうなジローの話を、まずは聞くことにしました。
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