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ジローは、よほど急いで走ってきたのか、息をきらしています。
「あのな、あのな、もうすぐ村の夏祭りなんだ!」
「何、夏祭り?なんだそれは?」
鬼はすぐに切り返しましたが、それはどうやらジローの話をさえぎってしまったようです。
それに気付いた鬼は、あわてて口を閉じ、再びジローの話に耳を傾けます。
「オレな、ちょっと前から祭りの準備を手伝ってるんだけど、すげぇんだ!とにかくすげぇんだ!」
それから、ジローは今まで鬼が見たこともない勢いで、村の夏祭りについてまくしたてました。
ジローにとっては、久しぶりに腰を落ち着けられた地。
新しい友達もでき、鬼という世にも奇妙な素晴らしい出会いもあった村での、初めてのお祭り。
ジローの興奮が、止まることはありません。
そんなジローの話を、鬼がようやく理解したのは、すこし時間が経ってからでした。
ジローもようやく落ち着いたのか、大きな深呼吸の後、一度話が途切れます。
「ほぉほぉ。それは楽しそうじゃのぉ。」
鬼は顔をほころばせ、そう言いました。
ジローも、満面の笑顔で応えます。
鬼は夏祭りのことよりも、楽しそうなジローが見れたことに嬉しさを感じました。
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