13人が本棚に入れています
本棚に追加
するとジローも、一際嬉しそうな笑顔になりました。そして、ジローは今日本当に伝えたかったことを、鬼に話します。
「だからさ、オジサンも一緒に夏祭りに行こうよ!」
「なに!?ワシも夏祭りというやつに行くのか!?」
そう答えた鬼を見て、ジローは思わず吹き出してしまいました。
鬼が本当に驚いた時に見せる反応が、出会った日から変わっていないからです。
鬼は、なにやら唸りながら腕組みをしています。
ジローへの返事を迷っているのが、よくわかりました。
鬼にとっては、ジローと行く夏祭りへの楽しみと同じくらい、見知らぬ人間がたくさんいる場所に、不安があったのです。
それに、ジロー以外の人間を知らない鬼は、たくさんの人間が力を合わせて行なう「夏祭り」というものが、よくわかりません。
行こうか、行くまいか。
鬼の考えは、頭の中でくるくると絡み合い、なかなか答えが出てきませんでした。
「なぁ、行こうよ、オジサン!」
それを遮る、あまりにも明るいジローの声。
鬼が見た目とは裏腹に、意外に気が小さいこと、強引な押しに弱いことを、ジローは知っていたのです。
すると鬼は、大きなため息を一つもらし、ジローに答えました。
最初のコメントを投稿しよう!