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「うん、それじゃあ、行こうかの。」
鬼がそう言うのが早いか、ジローは歓声をあげ、飛び上がります。
「やったぁ!それじゃあさ、お祭りの日に迎えにくるよ!待っててくれよな!」
ジローは、鬼の手を握りながらそう言いました。
そして伝えたいことが終わったのか、突然振り向き走り去っていきます。
「ごめんな、オジサンもっと話したかったんだけど、もう帰らなきゃお父が心配する。」
途中、こちらにそう手を振ってくれたものの、鉄砲玉のような勢いのジローは、すぐに見えなくなってしまいました。
鬼が止める間もなく、去った後に残るのは、風が木々を揺らす音だけが残る森だけ。
まだまだ話したいことがあった鬼は、小さなため息を一つつきながら、家路につきました。
しかし、鬼は少しも悲しくありません。
ただただ、友達だったジローが来てくれたこと。
そして、ジローがあれだけ楽しそうにしている人間の「夏祭り」に、自分を誘ってくれたことに満足していました。
夏祭り。
それは、どんなものなんだろう。
鬼にとっては、全てが初めてのこと。
そんな、見たことも聞いたことのないものを想像するだけで、楽しい気持ちになれました。
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