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一方ジローは、家に向かって大急ぎ。
夕陽はもう完全に落ち、夜の闇は濃さを増すばかりです。
しかし、いくら暗くなろうと、ここはジローの遊び場。目を閉じながらでも動き回れる、自分の庭のような場所でした。
それでも、ジローは走りました。
止まって、ゆっくり歩いていこうとは思いません。
家で一人待っているだろう、父親のため。
それもありました。
しかし、ジローは動いて疲れることで、少し冷静になりたかったのです。
「みんな驚くぞ。鬼のオジサンつれて、オレの友達だなんて言ったら。」
イタズラ盛りのジローは、村の人達を脅かしてやろうとも思っていました。
「あの山には、恐ろしい鬼がいるから、山深くは入っちゃいけねぇ!」
村の大人達は、口を揃えて言います。
あんなに楽しいオジサンなのに。
なら、直接会わせてわかってもらおう。大人達を驚かすという、いつも叱られている仕返しもかねて。
そんなことを考えているうち、家はもう目の前です。
「ただいま!」
「おかえり、ジロー。どうした?いいことでもあったのか?」
父親から笑顔の質問。一瞬どきりとしたジロー。
「なんでもないよ。」
冷静を装い、素っ気なく答えました。
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