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「おう、ジローちゃんか!」
「そこのほうかむりは、新しいお友達か?」
「飴売りさんや、大道芸人さん、もう皆来とるよ。」
「お父さんも、さっきから上で待っとるよ。」
鬼の手を引くジローに、大人達が声をかけてくれます。
「うん!ありがとな!」
返事をしながらも、内心しめしめと思っていました。
誰も、鬼の正体に気付いてなかったからです。
そうやって、時折段を飛ばしながら登る石段は、まさにあっという間。
目の前には、活気にあふれた人々と、雲一つない夏の青空が広がりました。
「おぉ~!」
「おぉ~!」
二人は同時に声をもらします。
ジローが鬼を呼びに行ったわずかの時間に、祭りは大変な盛り上がりになったようです。
飴、風車行商の売り文句や、大道芸人達の掛け声。
いつもは静かな神社から、想像もできない賑わい生まれています。
特に呆気にとられた鬼は、ただ口をポカンと開け、固まっているだけでした。
「なぁ、オジサン!早速飴とか食べようぜ!」
その声に、ハッと正気に戻った鬼は、ジローについていきます。
「お、おぉそうじゃの。飴とは、甘い甘い、きれいな色をした石ころのような食い物じゃったの。楽しみじゃ!」
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