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「そちらの方は?村では見かけたことはないが…?」
「う…ワ、ワシは…」
ジローのお父さんが話し掛けると、鬼はどもり、なかなか上手く言葉をだせません。
「オレの友達だ!」
口の中いっぱいにおにぎりを詰めながら、代わりにジローが答えました。
ジローのお父さんは、一瞬キョトンとしましたが、すぐに笑顔となり鬼に言います。
「ハハハハハ、そうか。うちの子が迷惑をおかけします。やんちゃすぎる子ではありますが、よろしくお願いしますね。」
そうして、お父さんがペコリと頭を下げると、鬼もあわてて頭を下げました。
その時、境内に響いていた太鼓の音が一際強くなります。
音の間隔も速くなり、皆が注目しはじめると、社の方からは鈴が鳴り始めました。
「お、ジロー。神主様の奉納が始まるぞ。」
ジローのお父さんが、社の方を指差しながら教えてくれます。
鬼とジローが、少し距離のある社に目を凝らすと、ちょうど神主が巫女さんを従えて出てくるところ。
先程まで、様々な声で騒がしかった境内は、皆そちらに目を奪われていました。
神主はいかにも儀式らしく、ゆっくり一歩づつ、境内に作られた簡単な舞台へと進んでいきす。
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