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台上にあがりきった神主は、一礼の後祝詞を読み上げます。
先程まで騒がしかった境内に、神主のよく通る声だけが響いていました。
最初は物珍しいと思っていたジローでしたが、次第に退屈になり、先程買った風車をいじりだしました。
そして、とうとう我慢できなくなり、お父さんの袖をひっぱり小声で話し掛けます。
「なぁ、お父。神主様、さっきから何をお祈りしてるんだ?」
お父さんは、静かにしなさいと言いたそうに、ジローに目配せをしました。
しかし、ジローはなおも話し掛けます。
「オジサンも教えてほしいって。」
ジローが鬼を肘で鬼を小突きます。
鬼は驚いたようで、出しかけた声を飲み込みながら、うつむいてしまいました。
それを見たお父さんは、ため息を一つつき、仕方がなさそうに小声で答え始めました。
「このお祭りはな、秋の豊作を祈願するのが一つ。あと、昔この辺にいたという悪い鬼を、追い払ったことのお祝いでもあるそうだ。」
ジローは驚きました。
鬼はもっと驚いたようで、お父さんに聞き返します。
「わ、悪い、鬼…?」
「ええ。詳しくは知りませんがそう聞いてますよ。村の方なのに、ご存じなかったのですか?」
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