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「お父、その話って…?」
「なにぶん当時の人ももうほとんど残ってないし、どこまで本当かはわからんがな。なんでも、村を襲ったり、人を食べたりもしたらしい。」
ジローも鬼も、ゴクリと唾を飲み込み、黙ってしまいます。
「さぁ、もう静かにしなさい。聞き分けのない悪い子は、鬼に食べられてしまうぞ。」
お父さんは、ジローの頭をなでながら言いました。
しかし、ジローは先程よりもさらに声を落としてながら、鬼に話し掛けます。
「な、なぁなぁオジサン。」
「ワ、ワシはそんなことしとらん。村にも人間にもなんもしとらん。ワシじゃあないぞ。」
鬼は、あわてて答えます。
「うん、わかってるよ。オジサンは友達だもんな。そんな悪いやつじゃないよ。」
鬼は、ほっとしたように笑顔になりました。
ジローにとって鬼は、そんな昔に悪いことをした鬼とはまったくの別物です。
人間のことをまったく知らない、好奇心の強い、そのくせに妙に臆病で気の小さい楽しいやつ。
最高の友達でした。
そんな大それたことを鬼ができないのは、ジローがよく知っています。
「気にすんなよ。昔いた悪い鬼のことなんて、今のオジサンとはなにも関係ないよ。」
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