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鬼はもう、頭の中が真っ白になりました。
怖いとか、どうしてとか、それすら考えることもできません。
「待ってくれよ、お父!」
聞き慣れた声のはずなのに、鬼は一瞬誰の叫びなのか迷ってしまいました。
ジローのお父さんと鬼の間に入ったのは、ジロー。
「やめてくれよ!このオジサンは悪い鬼なんかじゃない!だから、怖がったり怯えたりしなくていいんだ!」
ジローのお父さんは驚きました。
「何を言ってるんだ!とにかく危ない!その鬼から離れなさい!」
「いやだ!離れない!」
「離れろといっているのがわからんのか!」
刀を構えたジローのお父さんが、我慢できなくなり怒鳴り声をあげました。
一瞬ビクリと体を震わせたジローですが、すぐにお父さんをにらみ返します。
「いやだ!オジサンは、何も危なくなんかない!」
怒鳴り返すジローに、お父さんの顔はみるみる赤くなっていきます。
「子供が親になんて口を利く!お前に何がわかるんだ!」
「わかるさ!鬼のオジサンは、オレの友達だ!」
すると、シンと静かになる、ジローのお父さんと村人達。
ジローは続けて、鬼に言います。
「そうだろ!?オジサンもなんとか言ってやれよ!」
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