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ある日のことです。
いつものように、お腹が空いたので、鬼は好物の実のなる木へ向かいました。
しかし、いつもの木は、先にやってきていた野鳥達が、すでに昼食会を開いていたのです。
何だか今年は元気がなく、つける実の数も少ないその木は、どうやらもう満員のよう。
仕方がない。
鬼は溜め息をつきながらも、他の木を探すことにしました。
なに、なんとかなるさ。
たまには、他の木の実を食べるのもいい。
そんなことを考えながら、鬼はまたぶらぶらと歩きだしました。
しばらくたつと、案の定実のなっている木を発見。
しかし、そこにもまた、先客がいたのです。
そいつは、それまで見たこともないやつでした。
姿形は鬼に似ていますが、肌の色が違うし、体も小さく細く、か弱いものです。
鬼は、ふと閃きました。
もしかして、あれが人間という生き物ではないのか。
小さい頃に、聞いたことをうっすらと覚えています。
山を降りると、そこには人間という、自分達と似たやつらがいる、と。
その程度の知識しかない、未知の生き物である人間がそこにいます。
これまでの長い時間、この山で生きてきた鬼ですが、こんなことは初めてでした。
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