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少年の名はジローといいます。
ジローは、山遊びが何よりも好きでした。
お母さんがなく、諸国を巡る武芸者のお父さん。ジローはまだ、お父さんのそんな事情を詳しく知りません。
様々な所に住み着き、友達ができたかと思えば、すぐに次の土地へ。
それだけが、ジローにとっての問題でした。
そんな生活を繰り返すうちに、ジローは友達を作ることがなくなっていったのです。
そんなジローにとって、山とはどこに行っても、必ずそこにいる友達。
忙しいお父さんに代わり、色んなことを教えてくれる先生。
そして、もう顔も覚えていない優しいお母さんでもあったのです。
しかし、今回の土地は、いつもと少しだけ違う。
あるお殿様が、剣道の指南役として、お父さんを招いてくれたそうなのです。
お父さんの言うことの、ほとんどは分かりませんでした。
しかし、どうやら自分はこの土地にずっといれるのだということです。
嬉しかった。
もう、仲良くなった友達と離れなくてもいいんだから。
そんな上機嫌も手伝い、いつもより、山奥に入って遊ぼうと思いました。
そして、美味しそうな実のなる木を見つけ、小踊りしたちょうどその時、妙な音を聞いたのです。
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