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ジローは最初、野ウサギか、山で仕事をしている、村の大人かと思いました。
けど、そこにいたのは、今まで見たこともない人、いや、人かどうかも分からない、なにかだったのです。
そういえば、村の子供たちは皆言っていました。
山の中には鬼がいて、悪い子供をさらっていっちゃうんだ、と。
なぜだか、すぐに分かりました。
この人が、その鬼なんだと。
だけど、まだ引っ越してきて間もないジローは、村の人たちが言うほど、鬼の話に怖さの実感がありませんでした。
なにより、今目の前にいる鬼は、怖いだとか、恐ろしいだとか、少しもそういうところがありません。
ぽかんと口を開けたまま、ただこっちを見ているだけ。
ジローは、なんだか可笑しくなってしまいました。
村人達が口々に噂する鬼が、こんなに緩い雰囲気のやつだったから。
すると、次に沸き上がってくるのは、どうしようもない好奇心。
鬼という未知の生き物と出会ったことが、上機嫌だったジローの心をふるわせます。
そして、意を決して近付いてみると、鬼はなんだかあたふたとした様子。
そんな鬼に、ジローの中の勇気と好奇心は、ますます高まっていきました。
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