ハセガワ

2/2
3303人が本棚に入れています
本棚に追加
/54ページ
ハセガワは男に生まれて32年。   彼の仕事は、工場で朝8時から18時までくる日もくる日も手の平サイズのQP人形に手足を取り付ける仕事をしている。 主に左足を担当しているハセガワは右利き。 仕事一筋 十と余年。 いつのまにか元気良く生えるどころか白髪も目立ち始めた鼻から下以降の毛が、ドンドン毛深くなると同時に頭はリモコンの赤外線を反射するかのごとくきらびやかになっていく。 自尊心の為に切らずに生やす耳まわりや、わずかな前髪の毛は、まるでワカメの様に彼の視界を邪魔する様になっていた。 そんな彼は僕達の期待を裏切らない。 彼は女性経験のまったくないチェリーワカメだった。 もうさくらんぼなのか海産物なのかよく分からない生き物だ。 さらに男の独り身の為に、怠慢と言う名の体脂肪は腹に蓄積され、安心という名の貯金は趣味のキャバクラに帰って来ない年金のごとく消えていた。 友達もいない32歳童貞のハセガワの唯一の楽しみは、週末の夜にキャバクラに行く事だった。 ハセガワが指名しているリサという夜の蝶はアイドルの様に可愛い女性。 延長無しの50分の夢の一時 今日も黒服のダウンサービスとリアルな値段が書かれた紙切れで一夜の夢は終わった。 1DKのゴミが散乱した自分の部屋に帰り、今日もハセガワはリサの事を考える。 一切女性経験の無いハセガワ。 (きっとリサはオナラなんかしない…) 女性の知識が皆無のハセガワ。日に日に果てしなく間違えるリサに対する見解。 この日もハセガワの深夜のリサへの妄想タイムが始まった。
/54ページ

最初のコメントを投稿しよう!