四つ脚のヒト

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四つ脚のヒト

幼い頃にいた乳母は、自身を人ならざるモノだと良く言っていた。 「私たちはねぇ、人じゃないの。狐は歳を重ねて行くうちに、不思議な力を持つ。その力で人の姿になることができるのよ」 私やあなたみたいにね、と良く言っていた。彼女は私に身を守る術を教えてくれた。人にはできないことを教えてくれた。彼女といるのが楽しかった。しかし、ある日突然いなくなった。 あまりにも突然に。 「今日、あの人は来ないのですか?」 母君に尋ねると、少し嫌そうな顔をして答えてくれた。 「お前の相手をしていたから呪われてしまったんだよ」 だから私に話しかけないでおくれ、と冷たく言い放った。 今思うと理不尽だが、幼い私には分からなかった。 あれから13回目の冬が来る。
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