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寒い。
雪が降りそうなくらいに寒い。私の尻尾では追い付かないくらい。
毎年冬が来ると、母君は少し嬉しそうだ。しかし、春に私の顔を見ると機嫌が悪くなる。最近気がついたのだが、母君は私が凍死したら良いと思っているらしかった。
酷い、とは思わない。きっと私は母君の子ではないだろうから、それを愛せと言っても無理だろう。
私は母君も冬も好きだ。本当の母を知らない私にとって、彼女は私の母。嫌うことなどできない。
冬が好きなのは、庭に珍客が来るからだ。毎年狐が1匹、私の元に来る。そして、私は呪われていないと一生懸命話すのだ。
初めは耳をかさなかったが、あまりにも一生懸命なので、いつの間にかその狐とだけは話すようになった。
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