序章

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  薄暗い雑木林の中、私は迷子になっていた。 空はいつの間にか藍で染まり、月と競うように一番星が力強く輝いている。 朝から歩き続けていた私の服はすでにボロボロで、肌にはいくつもの切り傷ができていた。 変な話だが、気づいた時から私は歩いていたと思う。 なぜ私はここにいるのか、ここがどこなのか、そもそも私が誰なのかさえ知らない。 一日中歩いても雑木林は続くばかりだし、何より、人っ子一人いないことが私を不安にさせた。 もしかしたら世界は雑木林で覆われているのかもしれない。 もしかしたら私は世界でたった一人の人間なのかもしれない。 もしかしたらこれは夢なのかもしれない。 もしかしたら、もしかしたら……  
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