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「わ…っ」
細長く逞しい手だ。男性という事しかわからない。呆気にとられた私を勢い良く引き上げてくれた
あんなに深い闇が引き上げてくれた時にはちっぽけな川にしか見えない。
あぁ、私は生きれるんだ。また生きていれる…
目の前の男性にお礼を言わなくては駄目だ。こんな私を助けてくるたんだから
でも、男性の顔は全然見えなかった。黒髪で短く丁度顔だけに影が落ちている。ただ分かるのは…
私を見る目が優しいような感じがした。口が微笑んで声に出さなくても『助かって良かったね』と言ってくれた気がした
「……誰?」
男性は微笑んだまま。答えてくれようとはしてくれなかった。
「ねえ誰?なんで私を助けてくれたの?」
やっぱり微笑んだまま。どうして答えてくれないんだろう…それが焦れったい。それとも喋れないのかな?そんな事を考えていると男性の姿が少しずつ光の粒になって消えていく
私はギョッとして目を丸めたと同時にまた涙が出てきた
「消えないで……」
怖かった。もう二度と会えなくなると思って涙が止まらない
泣く私を幼子に宥めるように頭を撫でてくれた。だけど私にはちっとも効かない。
…ソレでもアナタは、消エテイク。マタ消エテイク。黙って消エテイクンでしょ?ズルいよ
何故そうやって言ったんだろう?私は若い男性を亡くした事ないのに…
『ごめんね。許して。』
男性は一言謝った。その声は酷く悲しく辛く。でも笑顔は絶やさないまま男性は姿を消した。
その瞬間、私は目覚めた
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