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「ごごご、ごめんなさい!!べつにのぞこうとか盗み聞きしようとかそんなつもりはみじんもなくて…!!」
とにかくひら謝り。相手に言葉を言わせない。それが輝一の謝るときの決まりだった。大抵の人はその空気におされて怒りを忘れてくれたから。
けどもともと怒鳴り散らしていた秀二には効かず、不機嫌なオーラが顔をあげずとも伝わってくる。
「秀二、あんまり睨むと彼が可哀想じゃない。言ってることは本当みたいだしね」
そう言いながら祥二は輝一が持ってきたダンボール箱を机の上に乗せた。中から本を取り出して「ほら」と秀二に見せる。
「…俺は今なぁ、めちゃくちゃ機嫌が悪いんだよ……」
そんなの見ればわかります。心の中で思って、けど恐ろしいので口にはしなかった。
「お前どこのクラスだ」
聞かれて輝一は一瞬怖さを忘れた。どうやら自分たちのこと以外は眼中になく、クラスメイトなのに覚えられていないらしい。嬉しいやら悲しいやら。
「鳥羽輝一」
輝一が口をひらく前に祥二が言う。
「だったよね、たしか。同じクラスだよ」
どうやらこっちは知っていたみたいだ。
秀二は同じクラスだという事実に驚いて少し目を見開いた。そして眉間によっていた皺がなくなる。
その顔は、幼い少年の無邪気な表情になっていた。
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