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「鳥羽輝一って…あの鳥羽輝一か……?」
秀二の言っていることが輝一には理解できなかった。"あの"も何も自分以外に鳥羽輝一なんて名前を聞いたことはない。有名になるようなことをした覚えもないし。
「だと思うよ。彼身長もそんなに高くないし」
祥二の言葉に輝一はむっとした。たしかに自分は背は高くない。どちらかと言えば小さい方に入る。けどだからってそれをあまり知らない他人に言われる筋合いはなかった。
「……すげぇ」
「え?」
「お前が鳥羽輝一か!!」
ガシッと力強く肩を抱かれる。意味のわからない輝一はされるがまま頭をガシガシと撫でられた。
「…ちょっ!!」
「秀二…彼困ってるよ」
祥二が輝一を助けようと言った言葉を、秀二は聞かなかった。ただ「すげぇすげぇ」と言いながら頭を撫でる。あまりにも力強いから輝一は禿げないか心配になった。
「離してあげなよ」
すっと祥二が輝一の襟首を引っ張って秀二からひきはがした。
───…俺は猫か
文句を言いつつも秀二から解放してくれたことを感謝する。意味もわからず頭を撫でくりまわされても困るだけだ。
「や~でもまさか同じ学校とはな!!」
秀二は嬉しそうに笑って言った。
なんだか騙しているような気がして胸がチクリと痛む。俺はそんなに喜んでもらえるような人間じゃあ、ない。
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