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「言いにくいんだけど誰かと勘違いしてるんじゃ……」
そうであってほしいと願いながら、輝一は二人を見た。しかし祥二は「勘違いなんてしてないよ」ときっぱり言う。だとしたら自分がいったい何をしたと言うのか。
「僕卓球部だったんだよ。中学のときね」
祥二はそう言ってにっこりと笑った。
卓球部
だとしたら例の事件を知っていてもおかしくはない。輝一が灰と築きあげた、新生卓球部のことを。
けど何で?何で彼はそんなに嬉しそうにしてるんだ?凄いだなんて、今まで誰も言わなかったのに。
「皆思ってたと思うよ。口にださないだけでね」
祥二はそう言ったけど、本当にそうなのだろうか。輝一自身凄いなんて思ったことは一度もない。伝統だった部活を、自分が壊してしまったのだから。たとえそれまでの部がどれだけ弱くとも、それは凄いことではなく、罪だ。
「なんだよそれ。お前もっと胸はっていいんだぞ」
秀二は輝一の胸を拳で軽く叩いた。本当に軽くだったけど、輝一は少しよろめいた。
胸をはるなんて無理だ。
灰がいなかったら俺はきっと何もできなかった。凄いのは、灰であって俺じゃない。
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