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記入を終えた入部届を見て溜め息。灰と違う部活に入るという不安からなのか、なんだか気がすすまなかった。
「ほら、行くぞ」
秀二はノリノリで輝一の腕を引っ張っていた。その少し前を祥二が行く。
───そんなに入りたいなら自分だけ入れよ。
そんな悪態を心の中でつきながら、けど彼の手を振り払うこともなく、輝一はおとなしく渡り廊下を歩いていった。もう体育館は目の前で、逃げ場はない。
───逃げ場って…
そんなことを考えた自分に嫌気がさした。卓球が好きなんじゃないのか?だから卓球部に入るんじゃないのか?灰がいないだけでこんな……
「…ぃ……おい!!」
「?!!」
考え込んでしまっていた輝一を秀二がのぞきこんでいるのが視界いっぱいに入る。
───ち、近い…!!
「早くシューズにはき変えろよ」
秀二と祥二はもうはいていて、上履きのままなのは輝一だけだ。
「あ、うん…ごめん」
「…謝ることねえけど」
ぼんやりとしている輝一を、秀二は心配そうに見る。体育館へ行くと言ってから、輝一はずっとこの調子だった。
「…お前さ、卓球好きだよな?」
なんでそんなことを秀二が聞くのか、輝一にはわからなかった。
「…好きだよ?」
けどそれを口にした途端自分の中に広がった不安が、まとわりついて消えることはなかった。
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