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「本当か?凄いなお前!!」
「…え?」
「先輩追っ払うなんて普通できねぇよ!!」
輝一はまさか笑われるとは思っていなかったので表紙抜けしてしまった。その様子を気にもしない男はすげぇすげぇと言って笑い続ける。
「君…入部するために来たんじゃないの?」
自分が入ろうと思っていた部活がこんな状況になってしまっていたら笑ってなんかいられないのではないか?遅れて来たあたりその可能性は低いのかもしれないけど。
しかし彼は、あっさりと「そうだよ」と言った。
「そのために入部届まで書いて来たんだから」
「だったらなん…」
なんで笑ってなんかいられるのかを聞こうとして、輝一は続きを飲み込んだ。
「つまんねぇ部活になんか入りたくねえっての、な」
にいっと笑って男は左手を差し出した。
「俺、橋爪灰(はしづめかい)。よろしく」
「……鳥羽、輝一」
恐る恐る輝一も手を差し出す。灰は嬉しそうに笑って強く手を握った。
「よしっじゃあ届でも出しに行ってついでに顧問にこの状況説明すっか!!」
「えぇ?!!」
「もとはと言えば輝一の責任だろー」
さりげなく名前を呼ばれ、輝一は出そうになった不満を押し込めた。
灰。
橋爪、灰。
輝一はその名前を何度も心の中で唱えながら、頬が緩むのを感じた。
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