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それから輝一と灰は、なんとか規定人数を集めて大会への出場を果たしていった。顧問は輝一が問題を起こしたことを怒ってやめてしまったが、灰の兄が週に2回教えに来てくれたので平気だった。困ったことと言えば部費がでないことだったが、ラケットやピンポン球はもともと学校にあったもので足りたし、体育館を使うなとは言われなかったので問題は何もなかった。
輝一と灰は中学最後の大会で県大会出場をきめた。
その腕を見込んでもらえてか、高校へも推薦であっさりと入れた。もちろん輝一は卓球を続けるつもりだった。
………けど灰は違った。
「…テニス部?」
「そ。俺ずっとテニスやりたいと思ってたからさ」
今まで灰はテニスのことなんて口に出していなかった。輝一にとっては突然で、裏切られたような気持ちもあった。だけど灰からしてみたらそれは、ずっと自分の中にあった考えだったのだろう。けれどそのことを言ってくれなかったということが、輝一を一番傷付けた。
「…そっか」
灰が卓球をやめてしまうなら、もうパートナーではいられない。
心臓がチクリと痛んだ。
もう灰にとって、俺はいらないんだ…
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