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「ちょっと…おじさんが怒ってる」
チハヤは小声でたしなめたが、少年はお構いなしに
「いいんだよ、子供にフクリューエン浴びせる方が悪いんだから」
と、平気で言ってのけたため、慌てた。
男性は益々不機嫌になり、煙草を灰皿にぐりぐりと押し付けた後ロビー車を出ていってしまった。
周りの大人たちは少年の生意気な物言いに冷たい目線を送っていたが、笑いを堪えている者も何人かいて、どちらにせよチハヤは小さくなるしかなかった。
少年はしらんぷりで背もたれに深く身を預けた。
「あーあ。それにしても退屈だな。北海道にはいつ着くんだろ。今どの辺なんだろうな~」
「え、北海道なの?」
「うん、北海道。札幌で降りる。お前も?」
少年は再び身を乗り出し、チハヤもまた少年を見つめた。
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