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「へぇ、一緒だ。偶然だね」
行き先が同じの子がいる。
それだけで、チハヤはとても嬉しかった。
だが少年は妙に大人びた表情でチハヤに詰め寄り、
「そうだなぁ。こんな時期に、この列車に、子供が乗ってること自体珍しいのにな。
…お前さ、何か訳アリ?」
ニヤリと唇を歪めながら目を光らせた。
「え、訳アリって?」
「だからぁ、こんな変な時期に遠く北海道まで行かなきゃいけない理由は何だ、って聞いてるのさ」
「……」
「家庭の事情だろう?夜逃げとか、離婚とか。多いもんな」
離婚。
そう、両親が離婚したからチハヤは今ここにいる。
数えるほどしか会ったことのない遠い親戚の家へ行く。
新しい環境で上手くやっていけるのか、不安でとても心細い。
いや、上手く行くはずがない。
唯一頼りにしていた母から見放されてしまったのだから。
「お前なんかいらない」と言われたも同然なのだから…。
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