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「マジか…最初に何飲むか聞いとくべきだった…。
…おぉ、そうだ。お前にこれやるよ!」
少年はいそいそと上着のポケットを探ると、緑色の小さな固まりをチハヤに寄越してきた。
「…それなあに?」
固まりを受け取ってよく見てみると、それはぶよぶよと奇妙な感触で、ゴムか何かで出来た人形だった。
親指大の小さなそれは、爬虫類の生き物を象ったものらしく、胎児のように丸まって眠っている。
「なんだろうこれ。トカゲ?」
「え、トカゲに見えるか?それは恐竜なんだけど」
「トカゲにしか見えないよ。でもかわいい、小さくて」
手のひらの中で眠る小さな恐竜にチハヤの口許が綻ぶ。
「もらっていいの?どうして私にくれるの?」
「泣かしたお詫び」
「君のせいじゃないよ」
少年の名前がわからないので、そう呼ぶしかなかった。
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