56人が本棚に入れています
本棚に追加
/68ページ
「そうなのかな」
「そうだろうよ。それにさっきからお前の話聞いてたら、
母さんの味方ばっかりしてるけどさ、父さん何か悪いことしたのか?どっちかが浮気したとかじゃないんだろ?」
そうなのだ。
無意識のうちに父を悪者にしていた。チハヤもそれを考えていた。
「わかんない。あ、でも…」
「でも?」
「あのね…お母さんには家族が、身寄りがいないんだ。
お父さんには爺ちゃん婆ちゃんも親戚もいるけど、お母さんにはほとんど誰もいないの。
これからお世話になる親戚の人だって、そんなに仲がいい訳じゃないんだ」
父には味方が多い。
例えば父と母がケンカをしたとして、争いの原因が母にある時、逆に父が悪い時、或いはどちらとも言えない時だって、
父が周囲に少しでも愚痴をこぼせば、母はいつだって悪者になった。
他家から嫁いできた母は父の親類から見れば所詮他人でしかなく、事ある毎に多勢に無勢で批判を浴びる母には、身内の恥を開け広げに話せるような友人がいなかった。
最初のコメントを投稿しよう!