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「でも、そんなのどうすればいいの?本当は二人とも悪くなかった。二人とも大好きなのに。
大好きな二人からどっちか選んで、残った一人とはずっとお別れするなんて。
本当はどっちか選ぶなんてしたくなかったよ。私、何も考えないようにして…!
私は……お父さんを悪者にしてやっと決めたんだよ…」
そこまで話すと、チハヤはわっと泣きだした。
ユウキも静かに泣いていた。
お互いに泣かないように、泣かせないように気を付けていたのに。
チハヤは今ようやく理解した。
なぜ父を悪者にしてまで、母の味方についたのか。
誰にも聞かれなかったし、誰にも話さなかった。
一人で考えていたから、何もわからなかったのだ。
この時、車内放送で車掌が何か話していたが、声がくぐもっていて二人にはよく聞こえなかった。
次の駅名を告げたのかもしれない。今、この列車はどこを走っているのだろう。
二人は泣いてばかりで、車掌の声に耳を傾けることはしなかった。
だが問題はない。
二人の行く先である札幌はまだ遠いのだから…。
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