無力

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    「俺は両方とも一緒だよ。俺もお前と同じ一人っ子で三人家族。父さんも母さんもラブラブ。 だから俺、個室から出てってあげた。気を使って」     気を使う意味がチハヤにはよく分からなかった。     「羨ましいな。何で札幌行くの?引っ越し?」   「え…あぁ、痛いとこ突いてくるなぁ。言わなきゃダメかなぁ」     言わなきゃ話が進まないだろうとチハヤは思った。散々こちらの家庭事情を聞き出しておいて今更何を言わんやである。     「俺たちはねぇ…夜逃げ。夜逃げしたの」     夜逃げ。聞き慣れない言葉だったが、お父さんの見ていたドラマで聞いたことがあるかもしれない。   首を傾げるチハヤに察してユウキは説明した。     「平たく言うと、借金が返せなくなって遠くに逃げちゃうことかな」   「え!それって」   「悪いことだよ。勿論」   ユウキはケロリとした顔で言った。    
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