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ユウキはふと我に返り、チハヤの顔を覗き込んだ。
「大丈夫?お前なんか顔色悪いけど」
「大丈夫」
「ごめんな。こんな話、本当はするつもりなかったんだけど」
ユウキはそう言ったが、チハヤには分かっていた。
ユウキは、本当は誰かに話したかったんじゃないかな。
最初に会ったときの、ユウキの軽口を思い出す。
『お前、何か訳アリ?』
『夜逃げとか、離婚とか。多いもんな』
同じような境遇のチハヤを見つけて、ユウキは嬉しそうに話し掛けてくれた。
出会うまで気付かなかったけど、チハヤだって誰かに話したくて仕方なかった。
お互いに幸せを願う優しさと、
複雑な環境に身を置く子供が自分だけではないと安堵する気持ちとが混じる不思議な感情だけれど、それでも友情だとチハヤは思った。
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