無力

8/9
前へ
/68ページ
次へ
    「本当、ごめんな」     ユウキは何度も謝った。     「そんな、ユウキだって私の話聞いてくれたじゃない。私もユウキの事聞きたかったんだよ。 それにさっきから謝ってばっかりだけど、私に『すぐ謝るな』って言ったのユウキでしょ」     珍しく早口でまくし立てるチハヤを呆然と見つめ、     「そういやそうだよな」     ユウキは歯を見せて笑った。     「結局同じことしてるのな」   「あはは」     チハヤも一緒に笑う。   こうしていつまでも笑っていられたら、どんなに良いだろう。     「そういえばさ、さっきお前にあげた恐竜」   「恐竜?」     泣いているチハヤをあやすためにくれた、緑色の小さな人形。     「あぁ、トカゲ」   「トカゲじゃないっつーに。 …あーあ、そんな事言う奴には教えてやんねぇー」   「え、なにそれ」     チハヤが身を乗り出すと、ユウキは得意気に胸を反らした。    
/68ページ

最初のコメントを投稿しよう!

56人が本棚に入れています
本棚に追加