素直になれる魔法が欲しい

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気が付くと総悟は闇の中にたった一人で立っていた。 誰一人も居ない闇の空間。総悟は不安で不安でしかたがない。 「土方さん…‥」 自然と口から零れ出たのは愛しい人の名前。それと同時に一滴涙が零れ出る。 それからどの位経ったのだろうか…。総悟が涙を拭うと目の前に一寸の光が見えたのだ。そして、そこから響いてきたのは愛しい人の声。 「総悟…」 「土方さん!」 総悟は光に向かい走った。土方を求め暗闇の空間を走り続ける。 漸く光の元まで到達すると辺り一面が光だし総悟はキュッと目を閉じた。 「総悟‥起きろ。総悟…」 総悟が再び目を開けると目の前には心配そうに己を見つめている土方が居たのだ。 総悟は思わず土方にしがみ付くように抱きつき涙を流す。 「土方さんッ‥土方さんッ」 「どうした?変な夢でも見たのか」 総悟に抱きつかれ、土方は一瞬驚いたように目を見開いたが、すぐに優しく微笑み相手を落ち着かせようと背中を撫で相手にどうしたのか問い掛けた。 「夢…?…へ、あっ…離れろ土方コノヤロー」 寝呆けていた頭が完全に覚めれば相手に抱きついていたという恥ずかしさから相手を思い切り突き飛ばしてしまったのだ。 「いってぇなぁ。人が心配してやってんのに…。あ゙ー、仕事しろ!ボケッ」 土方は怒りに任せて総悟の頭を拳で殴り付けた。 殴られた総悟の方は不機嫌そうに頭を擦りながら土方を睨み付ける。 「殴ることはないだろィ。アンタなんて大嫌いでさァ」 また、やってしまったと内心落ち込む総悟に一番聞きたくない言葉が耳の中に入ってきたのだ。 「奇遇だな。俺もお前が嫌いだよ」 「一一っ!!!そ、そうですかィ。じゃあ、俺は失礼しやす」 「おぅ‥。って、ここはお前の部屋だろうが…」 総悟を引き止めようと腕を掴み顔を覗き込むと土方はギョッとする。総悟が悲しそうに涙を流していたのだ。 「離して下せェ!」 相手に腕を掴まれると腕をブンブンふりながら引っ張り離れようとした。 だが土方は腕を離そうとはせず、総悟を抱き寄せ優しく包み込んだ。 →
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