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長い後ろ髪を揺らし、玄武は白く細い指を晴明の首に絡ませた。しかしそれに殺意は微塵も感じられない。
晴明は呆れたように溜息を吐き、玄武を引き剥がした。
『痛ったい!ちょっと、何するんだ主!』
「煩い。大体お前、俺が女嫌いなの知ってるだろ。知っててやってるだろ」
『おや、バレたか』
「あたりまえだ」
一語ずつ区切って、はっきり言えば玄武は今度は楽しそうに笑い出す。その度に漆黒の髪が揺れる。
玄武は細く括れた腰に手を当て、艶やかな紅い唇を開いた。
『最近増えたな、鬼』
「…あぁ。祓っても祓ってもすぐに出てきやがる」
『それだけ邪念を持つ輩が多いってことかね』
「かもな」
自分は出てきた物を祓えば良い。邪念を持たなければならぬ政事などに興味はない。邪念を持つ者たちは心が弱い。
陰陽師に必要なのは、強靭な精神力。
それと力だけあれば十分だった。
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