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「マルス降りてきて」
優しい声をする女性が木の上で寝ている男に呼びかける。
呼ばれた男は女性に言われるまま木から飛び降りて女性の前に跪く。
「どのような御要件ですか姫?」
「マルス、二人でいるときはローダでいいですと言いましたよね?」
「しかし姫、あなた様は一国の姫、されど私は城に使える一兵士です」
「私は姫って呼ばれるのが嫌なんです」
「それではローダ様、どのような御要件ですか?」
マルスはにっこりと笑って話しかける。
それを見たローダはやれやれとした顔をして何かを諦めたようだ。
「私は明日強豪国のカーライナ王国に嫁ぎます。その事であなたはどう思います?」
「それはよかった事ではないですか。あのカーライナ王国に嫁げば、このアートスフィア王国も一生安泰です」
ローダの言葉にマルスは眉一つ動かず笑顔のまま話した。
「そう」
悲しそうにローダはいいどこかに歩きだしていった。
(マルスの馬鹿)
そう思いローダは左の薬指にはめている指輪を見める。
(私は本当は嫁ぎたくないです……)
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