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「守ちゃんはねぇ、小さい頃から正義感の強い子でねぇ……。」
「今時の若い子には珍しく優しい子でねぇ、あたしみたいな年寄りは色々と助けられたもんだわ……。」
「守のヤツもそろそろ結婚やら見合いやらの話も出てきとったじゃろうに……。孫、曾孫の顔も見せんと守は……。」
故人の思い出話は尽きる事無く口をついて溢れ出る。
皆が皆、方々で良き思い出を語り合う中、雷鳴と激しい雨音が響き始めた。
「神さんも怒っとるわ。まだ死なせるには早すぎる、言うとるんじゃのう。」
村の古老がぽつりと呟くと、静まり返る宴席にはただ屋根を打ち付ける雨だけがバチバチと音をたてていた。
一瞬の閃光が暗がりの障子の格子模様を映し、間を置かずして轟音が響き渡る。
がらがらがらがらっ!
どどぉぉぉぉぉんんん……
そして煌々と照っていた蛍光灯が一斉に消え失せた。
パタパタとスリッパで廊下を駆ける足音が一筋の光を携えて広間へやって来た。
燗の準備をしていた故人の伯母が、台所から懐中電灯をいち早く持って慌ただしく駆け込む。
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