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「明、遅いよ!!」
「速く来い!!」
何度も踏まれて、アスファルトにくっついてしまった桜の花びらを見ながら、歩いていたわたし。
そんなわたしの名を呼ぶ、聞き慣れた声がした。
ちょっとおっとりした口調の声。
そして、男勝りな口調の声。
下を向いて歩いていたわたしは、急いで顔を上げた。
そのまま相手の顔を見ながら走り出す……。
「幸ちゃん、香奈!!久しぶり!!」
その二人の名を呼んだ。
二人に聞こえるように、大きな声で。
大好きな、二人の友達の名を呼んだ。
「久しぶりって……ちょっと会ってないだけじゃん」
息を切らしているわたしに、そう言ったのは大原 幸恵(オオハラ ユキエ)。
わたしは、幸(ユキ)ちゃんと呼ばせてもらっている。
ふわふわとした癖っ気のある髪を、二つに結んだ可愛らしい女の子。
この幸ちゃんが、明島 隆の彼女さん。
「確かに……部活でも会ったしな」
腕を組み、小さく口端をあげたのは、月屋 香奈(ツキヤ カナ)。
香奈は“可愛い”より“綺麗”という言葉が似合う女の子。
切れ長の目にショートカットで、私服はいつもズボンという、ボーイッシュな一面もあるから、かっこよくも見える。
わたしの良き理解者。
「まぁまぁ、いいじゃん♪」
わたしの大好きな友達です。
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