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「明、行ってきなよ♪」
ぐい、と幸ちゃんに背中を押される。
でも、幸ちゃんみたいな140cm前半の小さな子に背中を押されても、159cmあるわたしが動く訳がない。
「……嫌だよ」
わたしの返答にむっとしたのか、より強い力で背中を押してくる。
だから幸ちゃん、押せないから。
絶対無理だから。
恥ずかしい……という理由もあるけど、まさの隣には、三浦 和人(ミウラ カズト)君が居る。
三浦君もテニス部で、まさとペアを組んでいるらしい。
三浦君も長身で、モテるんだろうなぁ、と勝手に思ってる。
そんな友達と一緒に居るのに、わたしが入っていくのは、図々しいというか……。
「「……はぁ」」
溜め息をついた音がした。
明らかに、わたしに聞こえるように。
香奈と幸ちゃんからの、ささやかな嫌がらせだ。
気がついたら、幸ちゃんは背中を押すのを諦めていたし。
「優香(ユウカ)さんと小林(コバヤシ)君を見てよ……あんなにくっついて……」
幸ちゃんが溜め息混じりにそう言った。
優香さんとは、上沢 優香(カミザワ ユウカ)ちゃんのこと。
わたしと幸ちゃんにとっては、小学校からの友達であり、部活友達。
香奈にとっては、中学校からの友達であり、部活友達。
仲は結構いい方だと思う。
小林 宗哉(コバヤシ ソウヤ)君は、優香ちゃんの彼氏さん。
あんまり話をしたことはないけど……優香ちゃん曰く、良い人らしい。
……まぁ、彼女だから、優しくされるのかもしれないけど。
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