真夜中の一本目

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天井を見ていた。 いつもの見慣れた天井。 窓からのわずかな光に目が慣れ、記憶と連携をとり、部屋の様子は手に取るようにわかる。 見慣れたはずのその天井を見つめ、シミやどうやってつけたかもわからないキズを数えていた。 私は岡野美紀、高校一年を迎えたばかり。 「今日も眠れないな…」 時計を見やると、真夜中の3時を過ぎようとしていた。 手探りで机の引き出しから眠剤を取り出し、唾液で飲み込む。 「明日も休もうかな…」 私は高校に入り、うまく仲間を作れず、いきなりイジメの洗礼を受けていた。 まぁ不登校なりかけっていうのかな?明日もサボろうと勝手に心に決め、布団に入り、目を閉じ考えにふける。 元々群れるのは苦手で、でも人より強いわけでもない。しかし、ある日見かねてイジメを止めてしまい、目をつけられてしまった。一人の私はイジメの標的には丁度良かったのだろう。次の日からは私の番だった。 くだらないやつら…。 そうこうしている内に、睡魔が襲ってきて、フワフワとした脱力感とともに心地よい感覚に身をまかせる。 と、急に部屋の雰囲気が変わる。 何かが部屋にいる!? 私は恐怖で動けない体を必死で抗い、なんとか視線を横に向けた。「やぁ、もやし食べておるか?」 ………え~っと…… そこには、鼻下から細長いヒゲを生やし、仮面をかぶったひょろ長い男がいた。 「とりあえず、叫ぶね?いい?…ぎゃぁぁぁぁ!!」 肺から今までにないくらいの空気を絞り出し、私は力の限り叫んだ。 家中に声が響き渡る。 ………………。 しかし誰も来ない。おかしい。下にいる両親には聞こえてるはずだ。普通なら部屋に飛び込んでくるはずである。 「なにこれ!?幻覚?安定剤飲みすぎ?それとも夢?」 私はパニックになっていた。 「現実かどうか…。お主の観点から見れば幻覚なのかもしれぬな。しかし、それは意味のない思考。ワシは現にお主から見えておるのだからな。」 意味のわからないことを言ってるが悪いやつではなさそうだ。 「えっと…で、何の用?」私は動揺を隠しつつ聞いてみた。 「お主…夕飯のもやし残したであろう!?」もやしは少し怒り気味のようだ 「今日は晩御飯食べてないんだけど…?」 「………まぁそういうこともあるじゃろう。以後気をつけよ!」 いや、ないから!ってかアンタ自体有り得ないから!しかも間違いかよ! というツッコミ衝動を抑え、出たのは声にならない声だけだった。「アヘァ」
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