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「ファァァ~ッフ」
まるで肺の空気全てをしぼりだすかのように、喉から口腔内を通り抜け、あくびが押し出された。
「まさか、こんなことが起きるなんてね…」
昨日はあれから、あいつとは色々な質問、話をした。
どうやら彼は、ここに来る前の記憶があいまいにしかないらしい。
自分の名前も知らず、彼の特徴的な細い鼻髭から、もやし仮面、と名付けた。なかなか良いネーミングセンスだ。
なんか文句ある?もっとも本人は微妙そうな顔していたが…
彼もこれからどうすればいいかはわかっていないので、とりあえず私の側で様子を見ると決めたようだ。
幸い、私にしか姿は見えていなく、問題はなさそうだ。
しかし、彼はいったい何なんだろう?やっぱり私の寂しいという心が生み出した幻覚…?まぁいずれにしろ、退屈しないですみそうなんだけどね。
朝ご飯代わりに飴玉を一つ口に頬張り、やつには冷蔵庫に余ってたもやしを与え、(菜食主義らしい、案外おいしそうに食べている)外に出ることにした。
三日ぶりの外の空気……まぁ特別おいしいとは感じないが、開放的で気分はいい。
学校に行くつもりはなく、目的もなく駅近くの公園まで歩くことにした。
っと玄関を出た所で後ろから呻き声が聞こえる。
「ヒィィィ、ふやけるぅ!しなびれるぅ!美紀殿、日の光は苦手じゃ。ちょいと姿を消しておきますぞ!側にはいますからな!」
「それはいいけど…」
モヤっさん…光苦手って、あんたほんとにもやしなのかよ…
まぁパンツ一丁のちっこい髭おじさんに周りウロウロされるのも鬱陶しいからいいんだけどね。
気を取り直して…散歩を続けることにした。
駅までは歩いて10分程。公園はそこからすぐの場所にある。そんなに大きな公園ではないが、綺麗に整備されており、昼時ともなると、ご飯を食べにサラリーマンとかそれなりに人は集まる。
5月末だというのに、もうかなりの暖かさ。日頃動いてない私が汗ばむのには十分な運動量だ。
久々の土を踏みしめ、汗を拭いながら、私は公園に入っていった。
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