†シャドーシンガー・美月†

3/3
前へ
/47ページ
次へ
美月から、2nd、3rdシングルを録音したいと要請があり、慌ててプロデューサー達は機材をセッティングする。 彼女はマイクを細い折れそうな腕で調節すると、シンセの音に合わせて歌い始める。 スタッフ全てを魅了する繊細にしてダイナミックな歌声。 作詞作曲もシンセのチューニングも全て彼女がする。 2ndはハードなR&Bソング。 3rdはロックバラード。 美月の表情に疲れが浮かぶ。 けれど彼女は一アルバム分、計十曲を歌い切り、休憩を取った。 ††† 「美月さん、大丈夫ですか?」 思わずプロデューサーは彼女に尋ねる。 「今日はこれで終わり。2ndと3rdアルバムは今度にするわ。」 痩せ細った華奢な身体のどこにこんなパワーがあるのだろう??? プロデューサーやスタッフ達はそんな気持ちになりながら、スタジオを後にした。 ††† アルバム…2nd、3rdシングルは全てワンテイクで録られた。 ワンテイクで充分過ぎる位素晴らしいのだ。 「美月は…完璧なシンガーだな…ポップス、R&B、ジャズ、ロック、バラード、ラップ、何でも歌いこなせる。」 プロデューサーは溜息を漏らす。 「曲作りも全て、ですよ?…有り得ない…」 歌声をチューニングするのも伴奏のシンセの音とのマニピュレートも全て美月がする。 スタッフには一切ささない。 しかし彼女の幅広い、繊細な声が重なり合うと素晴らしいハーモニィが生まれる。 仕上がりにプロのマニピュレーターも舌を巻いた。 「この曲…一人で全て???」 「ああ…」 「天才誕生だ…」 「ああ…だが…」 プロデューサーは不意に口ごもった。 †††
/47ページ

最初のコメントを投稿しよう!

31人が本棚に入れています
本棚に追加