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彩那・ヘルナンデス・琴原。
彼女は郵便受けの「不採用」の手紙をフロアにばらまき、溜息をついた。
「…ったく、何で駄目な訳ぇ???」
彼女はプロポーション抜群、顔だってハーフ特有の美しさをたたえていた。
ファッションモデルなら余裕でなれるだろう。
だが彼女がなりたいのは歌手。
日本に及ばず、世界に通用するシンガー。
それが彩那の夢で、ヴォーカルレッスンにも懸命に通っていた。
けれど、ヴォーカルレッスンの先生にも「琴原さんはパフォーマンスは最高なんですが、歌唱力をもう少しつけないと…」と言われる始末。
†††
するとプロモとテープを送っていたあるエージェンシーから電話がかかってきた。
「琴原さん。歌手って訳ではないんですが…プロモのモデルとして出ては頂けませんか?」
「プロモって…歌の???」
「訳あってシンガーさんは顔が出せないんですよ。けど歌と貴女のパフォーマンスがピッタリなんで、是非に…と。無理でしょうか?」
「…アタシ…歌手の真似すんの?」
「ええ…駄目なら駄目で…」
「やります。」
彩那はキッパリ告げた。
エージェンシーは撮影とかの打ち合わせをして、電話を切った。
†††
顔を出せないシンガー…
しかもモデルを着けてまで売り出したいなんて…
どんなシンガーなのか。
どんな歌声の持ち主なのか。
好奇心旺盛な彩那にはそれが興味を酷くひいた。
†††
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