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🌸春は恋の季節なんて、誰が言いだしたんだろう。
彼は自分にないものをもっている。
深く広いであろうこの世界を、もっともっと見てみたい。知りたいとつよく思った。
あなたと語り明かしたあの夜から。
彼の話を聞くのが好きだった。
果てなく広い海の話。海の水の味。こっそりつまみ食いしたクッキーの甘いこと。朝一番のジャスミンティーの香り。
まだ、さおりには知るはずもない世界。非常に興味深かった。
今までは、そう焦ることはないと過ごしてきたけど。
さおりは少し悲しくなった。
表情を察したのか、彼も少し悲しそうな顔をした。
『なんだかね、自分がちっぽけに思えてくるの。あなたの話に取り込まれてしまった気分よ』
『僕も時間を忘れてしまうくらいだよ。話す事が苦手なんだけど…。』
…
初めての沈黙。二人の間に温かい何かが動いた気がした。
ふと、窓に目をやる。
まだ眠たそうなおひさまが光を放っている。
🌃夜は肌寒かったのに。
気付けば体の中がポカポカする。💓そんな朝を迎えた。☀
『彼に追い付こう』と、心に決めた。
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