げそ天

2/9
前へ
/35ページ
次へ
🌸春は恋の季節なんて、誰が言いだしたんだろう。 彼は自分にないものをもっている。 深く広いであろうこの世界を、もっともっと見てみたい。知りたいとつよく思った。 あなたと語り明かしたあの夜から。 彼の話を聞くのが好きだった。 果てなく広い海の話。海の水の味。こっそりつまみ食いしたクッキーの甘いこと。朝一番のジャスミンティーの香り。 まだ、さおりには知るはずもない世界。非常に興味深かった。 今までは、そう焦ることはないと過ごしてきたけど。 さおりは少し悲しくなった。 表情を察したのか、彼も少し悲しそうな顔をした。 『なんだかね、自分がちっぽけに思えてくるの。あなたの話に取り込まれてしまった気分よ』 『僕も時間を忘れてしまうくらいだよ。話す事が苦手なんだけど…。』 … 初めての沈黙。二人の間に温かい何かが動いた気がした。 ふと、窓に目をやる。 まだ眠たそうなおひさまが光を放っている。 🌃夜は肌寒かったのに。 気付けば体の中がポカポカする。💓そんな朝を迎えた。☀ 『彼に追い付こう』と、心に決めた。image=88647768.jpg
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加