狂おしい程の愛

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10/20(金) 晴れ 久しぶりの日記だ。ここ数日は忙しく日記を書く暇もなかった。   親友が死んだ。彼女を紹介された次の日に私の目の前で運悪く暴走してきたトラックに引かれ、近くにいた私の体に肉片を飛び散らせて死んだ。 ぬめっとして生々しい血に濡れた臓器の色、私が浴びた鉄臭い血の匂い、親友だった人がただの物に変わる瞬間、人があんな風に死ぬ所を見たのは初めての経験だった。 近くにいた私も怪我を負ったが軽傷だったため、警察からの事情聴取を受けていた。 親友の死に何も感じていないような私の態度を警察はいぶかしんでいたようだが、目撃者も大勢おりどうみてもトラック側に過失がある事故だったためそれを追求されることはなかった。 そして葬式が今日終わった。参列者はみな一様に泣いていた、特に親友の両親と彼女のそれは一際だった。当然私は泣けなかった。 ヤツの馬鹿な顔をもう見ることはができないのは寂しくはあったが、悲しくはなかったから。 家に帰りしばらくすると何故か涙が流れた。物心ついてから初めての涙だった。何故急に涙がでたのかは分からない。 ただ、ヤツの死の直後にみた臓物や血は、とても美しかった。
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