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「じゃあ、回りましょうか?」
男は手を差し出す。
にっこり顔で。
事の発端は、一週間前。
文化祭まで一週間を目前にした放課後のこと。
私達、2年4組は喫茶店をすることになり。
看板やメニュー作り、
飾り付けの準備などで大忙しだった。
「要(かなめ)!そこ青だからっ」
「えっ…ウソ」
看板の色塗りをしようとしていた。
私、廣川(ひろかわ)要は。
友達の久堂(くどう)ミキに注意を受けた。
「もー。危ない。塗る前で良かった」
ミキは胸をなで下ろす。
「…てゆーか、看板作りに色まで決めるってどうよ?」
私は下書きの図案を睨みながら言う。
「やりやすくていいじゃない。ホラ、手動かして。時間がないんだから」
ミキは私に“やれ”の動作をする。
…そういうミキだって、口が動いてるじゃない。
そう思ったけど、口には出さなかった。
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