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「これは『鏡』。対象物を本物と同じように映し出す。だからこれが、ウォルフだよ」 「ナイルと、違う」 毛むくじゃらの顔。 鼻は高く、黒ずんでいる。 「どう違う??」 覚えたての言葉でなんとか伝えようと試みる。 「えと…『歯』が違う」 「これだね??『牙』っていうんだ。後は??」 「あと…毛が茶色で、いっぱい…爪が長い……あとは…??」 「そこからじゃ見えないかな。これも違うだろう??」 ナイルが手に軽く持ち、鏡に映るようにしたのは、尻尾。 「じゃ、次はこっちと比べてみようか」 あたしの目の前に来たのは、あたしよりもっと毛むくじゃらの茶色の固まり。 「これと、君は。どこが違うかな??」 小さい茶色の毛玉がゆっくりと動く。 こちらを見る。 どこか懐かしいような。 「これは『狼』って生きもの。君は俺とは違う。君は狼とも違う。でも、君は、この中間に属す、唯一の生き物だ」 難しくて、その時はまだ意味はわからなかった。 そしてナイルが一つ嘘をついたと知るのは、もっとずっと後の話。
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