64人が本棚に入れています
本棚に追加
「これは『鏡』。対象物を本物と同じように映し出す。だからこれが、ウォルフだよ」
「ナイルと、違う」
毛むくじゃらの顔。
鼻は高く、黒ずんでいる。
「どう違う??」
覚えたての言葉でなんとか伝えようと試みる。
「えと…『歯』が違う」
「これだね??『牙』っていうんだ。後は??」
「あと…毛が茶色で、いっぱい…爪が長い……あとは…??」
「そこからじゃ見えないかな。これも違うだろう??」
ナイルが手に軽く持ち、鏡に映るようにしたのは、尻尾。
「じゃ、次はこっちと比べてみようか」
あたしの目の前に来たのは、あたしよりもっと毛むくじゃらの茶色の固まり。
「これと、君は。どこが違うかな??」
小さい茶色の毛玉がゆっくりと動く。
こちらを見る。
どこか懐かしいような。
「これは『狼』って生きもの。君は俺とは違う。君は狼とも違う。でも、君は、この中間に属す、唯一の生き物だ」
難しくて、その時はまだ意味はわからなかった。
そしてナイルが一つ嘘をついたと知るのは、もっとずっと後の話。
最初のコメントを投稿しよう!