7. 彩音

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虫が飛んで火に入る 夏の夜 暗がり神社の段 鳥居に着飾る少女 八月下弦の月 綿菓子右手に母親を待ち 「なんで来ないの?」 雫滴る丑の刻 この子には別れなんて解せない 拾い集めた記憶の欠片 居た筈なのに… 「鼈甲飴頂戴?」 この溶ける想い出 何年で笑えるの? 手を離した風船 漆黒 でも優しい黒 小さくなっていく 飴玉が溶ける様に… 「バイバイ」 そう言って眠る地の底 宥めいろは歌 口ずさむ 七文字区切り 新月前の三日月と 冷たい土の中 涙が染みて 見えたのは――――――― 小さな重さ 感じて微笑み 「心配いらないからね」と… 風に掘り返される 二百と七年後 暁の空の下
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