『ビョーキ』

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 いくら望んでも手に入らないものはいくらでもある。  例えば自由だ。  僕みたいに不治の病なんて持ってるヤツは一人じゃ満足に生活する事すらできない。  なら、支える人さえいなくなったらどうなるのか。  僕は叔父さんと叔母さんの話を聞いてからそういう事ばかり考えていた。    そして、その日がきた。    担当の医者の先生が暗く、沈痛な面持ちで部屋に入ってきた。それを見た瞬間、僕はある事を確信する。  ……何かって?  決まってるさ。 「望くん……君に言わなきゃならない事があるんだ。……非常に言いにくいんだが……」 「寿命、の事ですか?」  医者は頷く。……ほら、当たった。 「保って……あと半年。それも病院内で治療を受け続けて、だ」 「……わかりました」  その日は曇天の暗い曇りだった。
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