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海里が帰ってから、僕はひとつの決心をした。
……頑張る。
僕はさっきのゴシップ記事をもう一度よく読んだ。なるほど、満月の夜に願うだけか。外を見れば都合良く満月。やってみようか。
「『記憶屋』よ、私の願いを聞き給え。私の望みはただ一つ。……僕を一日だけ自由な身体にして欲しい。病気も何もない、友達と過ごして、夢に挑戦する時間として、一日を下さい」
……さっき頑張るって言ったけど、それは生き延びることじゃない。残った日々を楽しみたい。そのためにやれる事を頑張るんだ。
ごめんね、海里。
僕はもう残された命以上に生きる気は無いんだ。お父さんもお母さんももういないし、叔父さんや叔母さんに迷惑をかけるのも嫌だ。
一つだけある夢以外、未練も無い。……自分勝手かな?
それでもいい。残った命、楽しもう。
その日を境に僕の容体は急変した。
ぼんやりとした意識を残して、あとは指一本動かせなくなった。喋る事もできず、ただただ必死に呼び掛ける友達の声や治療する医者の指示を聞くだけ。そのぼんやりとした意識すら日を追う事に更に薄くなっていった。
やっぱり、この世はそううまく出来ていない。願いは叶わないみたいだ。
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